2023年6月2日に公開された、映画『怪物』。
カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィア・パルム賞を受賞したことで、公開前から話題になっていました。
本作は『万引き家族』などで知られる是枝裕和(これえだ ひろかず)さんが監督を務め、2023年3月に亡くなった坂本龍一(さかもと りゅういち)さんが音楽を手掛けています。
安藤サクラ(あんどう さくら)さんや永山瑛太(ながやま えいた)さんら、キャストも豪華な顔ぶれ!
「神作」との呼び声も高い映画『怪物』がどんな作品なのか知りたいですよね。
そこでこの記事では、
- 映画『怪物』あらすじやネタバレ!
- 結末や犯人を考察!
こちらについて気になったのでご紹介します。
一緒に見ていきましょう♪
Contents
映画『怪物』あらすじやネタバレ!
是枝裕和監督作品の映画『怪物』は、3つの視点で物語が進行していきます。
安藤サクラさん演じる母親、永山瑛太さん演じる学校の先生、そして同級生の男の子2人。
一方の視点では分からなかったことが別の視点から明らかになる仕組みは、サスペンス好きにもたまらない展開と言えるでしょう。
ここでは映画『怪物』のあらすじと、ネタバレありで3つの視点の物語を紹介していきます。
映画『怪物』あらすじ
大きな湖が見える郊外の町。
ここに住むシングルマザーの麦野早織(むぎのさおり/安藤サクラ)は、ある日小学5年生の息子・湊(みなと/黒川想矢)とともにベランダから向かいのビルの火災を見ていました。
すると突然湊は、「豚の脳を移植した人間は人間なの?」と奇妙なことを言い出します。
それからというもの湊の様子がおかしく、ハサミで自分の髪を切ったり、水筒から泥水が出たりする始末。
挙句は廃線跡のトンネルで、「怪物だーれだ」と1人で叫んでいる姿まで目撃してしまいます。
何かを悩んでいる様子の湊を早織が問い詰めると、保利先生(ほりみちとし/永山瑛太)に「お前の脳は豚の脳だ」と言われたと告白しました。
早速保利に事情を聞く早織でしたが、「誤解があっただけ」として本人は悪びれない様子で……。
やがて早織は湊が星川依里(ほりかわより/柊木陽太)という生徒をいじめていると聞かされ、衝撃の真実を知ることになるのです。
ネタバレ①:母親の視点
息子を愛するシングルマザーの早織(さおり)は、湊(みなと)に異変が起きていることに気が付きます。
次々とおかしな行動をする湊。
そしてある日湊が家に帰って来なくなり、心配して探しに出かけると、廃線になったトンネルに行き着きます。
早織が奥へと進むと、「怪物だーれだ」と叫ぶを湊見つけるのです。
明らかに様子がおかしい湊を問いただすと、担任の保利(ほり)に「お前の脳は豚の脳だ」と言われたと告白。
早織は学校へと乗り込みますが、校長(田中裕子)や教頭(角田晃広)は事を荒立てないように必死としか見えません。
さらに校長は孫が亡くなったからと言って足早に去ってしまうのでした。
しかし早織はついに保利に暴力を認めさせ、地元の新聞でも大きく報じられます。
それからしばらくの後、湊が突然生まれ変わりの話題を出すようになり、不安が募っていく早織。
ある夜早織が目覚めると湊のベッドはもぬけの殻になっていました。
そして外では湊の名前を何度も呼ぶ保利の声が聞こえてきて……。
ネタバレ②:先生の視点
一見覇気のない保利(ほり)は、実は生徒想いで恋人の鈴村広奈(高畑充希)との仲も順調でした。
2人は買い物の帰りにビルが燃えているのを眺めます。
火事現場に走っていく教え子を見つけた保利は注意しますが、教え子たちがはしゃいだせいで彼の心配は絶えません。
そんなある日、教室で暴れる麦野湊(みぎのみなと)を止めようとした保利の手が当たってしまい、湊は怪我をしてしまいます。
保護者の麦野早織から「息子をいじめている」とクレームをつけられた保利は、不本意ながらも頭を下げるはめに。
別の日には湊がトイレを出た後に星川依里(ほしかわより)が閉じ込められているのを発見し、湊がいじめをしていると疑い始めます。
一方学校では、校長の孫が亡くなった一件は校長の夫が車で孫を轢いたとされているが、実は校長が轢いたという噂が立ち始めました。
そんな中で早織からの訴えにより謝罪会見を開かされた保利は職も恋人も全てを失うことになるのです。
失意の中で家に帰った保利は、依里の作文を横読みすると「むぎのみなとほしかわより」になっていることに気が付きます。
いじめは勘違いだと知り、湊の家に向かった保利は、早織とともにいなくなった湊を探すことに。
2人は廃電車を見つけますが、そこには誰もいませんでした。
ネタバレ③:子供の視点
同級生の麦野湊(むぎのみなと)と星川依里(ほしかわより)は仲良くなりますが、依里がクラスメイトからいじめられているのを知り、湊は学校では話しかけないようにと頼みます。
音楽室で2人きりになり、依里に髪の毛を触られた湊は、家に帰って触れられた部分の髪の毛を切り落としました。
教室で依里がからかわれているのを目撃した湊は、いじめっ子の気を逸らすために暴れ回ります。
さらに依里が靴を隠されているのを知り、湊は片方のスニーカーを貸して2人でケンケンをしながら帰りました。
2人は山の中の廃電車を秘密機にして、「怪物だーれだ」と言って互いに頭につけたカードの絵を当てるゲームをしたり、楽しく過ごします。
しかし学校では湊は依里と話さないので、依里がトイレに閉じ込められていると知りながら無視をしていました。
そんなある日、依里が転校することが分かります。
寂しさから思わず抱きついた湊にキスをしようとする依里。
依里は同性愛者だったのです。
そしてそんな依里に父・清高(中村獅童)が放った言葉が、「お前の脳は豚の脳だ」というものでした。
ある夜家を抜け出して依里に会いに行った湊は、依里を連れて廃電車へ向かいます。
翌朝になると2人は笑顔で木の間を駆け抜けるのでした。
映画『怪物』の結末や犯人を考察!
映画『怪物』では複数の視点から先の読めないドラマが展開していきます。
複雑に入り組む物語に頭をひねる部分もあるでしょう。
ここでは映画『怪物』で気になる展開について、考察してみます!
映画『怪物』の結末を考察!
映画『怪物』の結末では、土砂崩れから逃れた麦野湊(みなと)と星川依里(より)が新たな世界に向かって駆け出すシーンで幕を閉じました。
果たしてこの結末はどんな意味を持っているのでしょうか?
湊と依里は同性愛者として互いに愛し合う心がありましたが、周囲の大人にそのことを明かすことはできませんでした。
特に依里の場合は同性愛を嫌悪する父・清高がおり、さらには学校でもいじめを受けていたため、自らの秘密を吐露することはできなかったでしょう。
嵐の夜、そんな依里を湊が家から連れ出して、秘密基地である廃電車へと向かいます。
夜が明けると電車は土砂崩れで横転しており、2人は泥だらけの窓を開けて外へ出ました。
そして草むらを走り抜けると橋の上の線路の柵がなくなっており、2人はその先の世界へと駆け出すのです。
この時依里は「生まれ変わったのかな?」と聞きますが、湊は「変わってない」と答えていました。
おそらく2人は変わることを選ばず、同性愛者であるありのままを受け止めて新たな一歩を踏み出したのではないでしょうか?
2人が見ている世界が夢か現実か定かではなく、死んでしまったのでは?という考察もあるようです。
しかし2人は土砂崩れの時点では生きており、壊れた柵の先の世界へと旅立つが、その後の未来についてはわからないと考察できます。
放火した犯人は誰?
劇中でたびたび登場するビルの火災シーンは多くの人の印象に残ったでしょう。
果たして放火した犯人は誰だったのか、考察してみます。
放火の犯人はおそらく依里(より)と考えて間違いないでしょう。
物語が進行していく中で、いくつかのヒントがありました。
依里はチャッカマンを持っていて、火事の当日、現場近くですれ違って落としたのを校長が目撃しています。
その後、チャッカマンで猫を火葬しようとした依里を止めるため、湊が奪い取っていました。
この時に湊は放火の犯人が依里なのかと問い詰めます。
火事が起きたのは父・清高が通っていたガールズバーだったので、嫌悪感を抱いて依里が放火したと考えたのですね。
ここで依里ははっきりした返事はせず、「お酒を飲むのは体に良くない」とだけ答えました。
依里が自己中心的で暴力を振るう父・清高を嫌って、彼を殺すために放火をした可能性は高いでしょう。
怪物の正体とは何?
映画のタイトルにもなっている「怪物」
劇中では廃線跡のトンネルで湊が「怪物だーれだ」と叫んでいるシーンも登場しました。
「怪物だーれだ」と叫んでいた理由は、依里とカードを使った遊びをしていたからということが後から発覚します。
ただ、「怪物」という言葉が本作で大きな意味を持つことは間違いなさそうですよね?
では「怪物」の正体とは一体何だったのか、考察してみます。
それはおそらく、「登場人物のほとんど全員が誰かにとっての怪物」だったのではないでしょうか?
自分の都合で事実を捻じ曲げたり、常識だと思うことを人に押し付けたりするために、嘘をつき、結果として誰かにとっての「怪物」になっているのです。
例えば麦野早織にとっては湊への虐待を認めない学校の人間が「怪物」
保利道敏(ほりみちとし)にとっては、嘘によって自分を陥れた湊や依里、そして暴力を認めさせようと必死の早織が「怪物」。
湊にとっては母親の早織が、依里にとっては父親の清高が「怪物」、という構図になっているのです。
誰が「怪物」になるのかは、登場人物の視点によって変わってきます。
このことが、湊と依里の怪物ゲームに繋がっているのではないでしょうか?
2人が遊んでいるゲームでは、自分がどのカードを額に当てているかわからないのですが、それはつまり「誰もが自分が怪物だとわかっていない」のです。
自己中心的な考えや、嘘を発端として、誰もが「怪物」になってしまうということを伝えたかったのだと考えられます。
映画『怪物』あらすじやネタバレ!結末や犯人を考察!まとめ
2023年6月2日に公開された是枝裕和監督の映画『怪物』。
映画『怪物』あらすじやネタバレ!
結末や犯人を考察!
こちらについてのまとめです。
- 映画『怪物』は、3つの視点で物語が進行していく
- 結末では、湊と依里が同性愛者である自分自身を認め、新たな世界へ踏み出すような描写がされている
- 劇中に登場する火事シーンの放火の犯人は、おそらく父親を殺そうとした依里
- 登場人物のほとんど全員が誰かにとっての「怪物」であり、自己中心的な考えや嘘によって誰もが「怪物」になってしまう
母親、先生、そして子供たちという3つの視点で物語が進行していく映画『怪物』
同性愛を扱った作品としてカンヌ国際映画祭でも評価されましたが、子供たちが周囲の人の不寛容さに苦しみながらも、新たな世界へ踏み出す結末は感動的です。
映画『怪物』がたくさんの人に愛される作品になるよう、応援しています!



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